扉
新しき旅立ちへ
太田 富雄
1
1大阪医科大学
pp.1005
発行日 1984年8月10日
Published Date 1984/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201892
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中枢神経系疾患が外科的に治療されてきた過程を振り返ると,診断面では大体3つの時期が区別される.第1期は,神経学的診断法を駆使し,病変の局在を推測した時代である.この頃の脳神経外科医の局在診断力は,神経内科医のそれよりも,優るとも劣らないものであったに違いない.脳腫瘍の存在を確信して開頭術を施行したが,腫瘍がみられなかった場合,これを"偽脳腫瘍pseudotumor cerebri"といったし,"偽局在徴候false-localizing signs"に関する知識が重要であったのもこの時代である.
これに対し,気脳写や脳血管写などの補助検査法が導入された時期が第2期にあたる.病変の局在診断は飛躍的に向上したが,病変により圧排された脳室や,脳血管の偏位の具合から,間接的に病変の局在を知るというものであった.したがって,"影"として表現される補助検査所見から如何に正確に"真の病像"を推測するかが,重要な部門を占めるようになった.神経放射線学が欧米で独立した科を作るようになったのも,当然の成り行きであった.
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