連載 ケアの方舟・16
迷惑の人
石原 雅彦
pp.980-982
発行日 2005年11月1日
Published Date 2005/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100241
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時の遠近法
8月8日に母が死んでから,時の経つのが恐ろしく早く感じられる。四十九日が過ぎ,慌てて注文した墓ができ上がり,11月の百箇日法要の際に納骨と決まった。時間というのは長いようで短く,見事に伸縮自在であることを身をもって体験し,地獄のように長く感じられた丸2年間にわたる母の看護・介護が,終わってみるとあっという間の出来事に過ぎなかったと思えるようになっていることに驚く。
時の流れが伸縮自在に感じられるようになると,過ぎ去った日々を振り返って現在から過去を見はるかす風景の見え方もまた自在になり,その時その場所では理解できなかったことの数々が,相互に関連し,確かな脈絡の中で起きていたということが見えてくる。時の流れの中で起こった出来事もまた,ちゃんと遠近法に支配されているのだろう。
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