連載 病とともに紡ぐ援助論・7
「迷惑」/「ホスピスホーム」
ひらす けい
pp.898-901
発行日 2002年10月10日
Published Date 2002/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902693
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3回目の入院では,2クールの化学療法と骨盤への転移部分の放射線治療を実施した。慣れは恐ろしいものである。当初は決死の覚悟で受けた治療も,今ではルーティン化された仕事のようなものになっている。スタッフとのやり取りも簡単に済ませ,傍目には淡々と治療を受けているように見えただろう。私は,スタッフからは自己対処力のある“良い患者”との評価を受けていたはずである。
しかし,“良い患者”は往々にして,曲者である。喚き,嘆き,泣き,文句を言い,振り回す患者のほうが,行儀が良く冷静な患者よりも,遙かに多くの情報をスタッフに伝えている。豊かな情報は,的確な対処のための源泉である。曲者は,スタッフにとって予想外の事態を生起させる。それは,地域の援助においても同様だ。何か月か接触していなかった人が,急変していることが良くある。私は,それを相談者のワーカビリティのせいにしていた。その人が相談してこなかったからだ,相談していれば何とかしてあげたのに,と。しかし,物事の本質を良く捉えている人は,“良い患者(相談者)=手のかからない人”こそ,注意深く見守り,働きかけねばならない人だということを,わきまえている。
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