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はじめに
2004(平成16)年4月の診療報酬改定において,言語聴覚士(以下,「ST」と略)による「在宅訪問リハビリテーション」が制度として初めて認められた。同年1月に出された高齢者リハビリテーション研究会による報告書の中でも,訪問リハビリテーション(以下,「訪問リハ」と略)について,特に「脳卒中による失語症の患者が在宅に多いにもかかわらず,言語聴覚士がサービス提供者として位置づけられていないといった問題も指摘されている」と述べられており,その制度化は急務であったといえる。
現在,介護保険における制度化が課題として残っているが,十数年にわたり,在宅の言語障害のある方々への訪問リハに関わり,その活動の重要性を痛感してきた筆者にとって,この制度化の意味はきわめて大きい。
図1は,日本言語聴覚士協会が2000年9月に実施したアンケート調査の中で,「訪問言語聴覚療法実施機関」について調査した結果である。STの国家資格化後,3年が経過した時点での調査のため,会員数は1000名に満たないが,そのうち1度でも訪問を行なった経験のある者が208名(21%)もおり,また,その実施機関も医療・保健・福祉と多分野にまたがるものであった。
また,2002年に,日本言語聴覚士協会,日本理学療法士協会,日本作業療法士協会の3協会合同で実施した介護支援専門員を対象とした「訪問リハニーズ調査」では,回答のあった介護支援専門員のうち,603名(80%)もが,利用者から「コミュニケーション障害」に関する相談を受けていたという結果が出ている。いずれの調査も,STによる訪問リハの制度化以前の調査であるにもかかわらず,在宅でSTの訪問を待つ利用者がいかに多かったか,また各地域のSTがいかにさまざまな背景の中で自主的に訪問リハを行なってきたかが推察される。筆者もその一員だが,1990年から10年間は,東京都世田谷区の行なう訪問指導事業に非常勤として協力し,1998年から2004年3月までは,世田谷区内のリハビリテーションクリニックから無償で訪問リハを,そして2004年4月以降は,医療保険の範囲内で可能な訪問リハを提供してきた。
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