連載 花凪の人々─なりたい自分になる介護・7
人が増えて,驚きが増えて
木村 美和子
1
1NPO法人在宅生活支援サービスホーム花凪
pp.66-67
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100052
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花凪のものはみんなのもの
Sさんが3人目の下宿人となってからの半年は,家全体がざわざわとして落ち着かない状況が続きました。目に触れるものはすべてSさんのもので,それは花凪下宿も例外ではありません。棚に飾ってある人形を手に取った瞬間,「私のものに触らないでください!」の声が飛び,テレビをつけると「勝手につけないでください!」と消しにきます。
ある日のこと,Sさんが急に「勝手に人の庭に棒を立てて!注意してきます!」と怒り始めました。窓の外を見ると,向かいのお宅の庭に紅白のポールが立っています。とうとう,向かいの家までSさんの家ということになっていました。収集癖もあって,食後はテーブルの上をすぐに片付けなくては,食器,箸,ランチョンマット,食べ残しのおかずまでがSさんのバックにしまいこまれていました。
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