今月の主題 肺癌—その理解と対処のために
肺癌は増えているか
平山 雄
1
1国立がんセンター研究所・疫学部
pp.1738-1740
発行日 1975年11月10日
Published Date 1975/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206279
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肺癌は増えている
日本の癌死亡は二重構造になっている,在来の環境条件の影響を強くうけて多発していた胃癌,子宮頸癌は,年々減少の一途をたどり,過去20年間に,前者は3分の1以上,後者は3分の2以上,40〜69歳の死亡が減少している.しかし一方,増加し続けている癌もある.その代表が肺癌で,そのほか,膵臓癌,膀胱癌,白血病,それに腸癌,乳癌も増えてきている.これらはいずれも西欧型の癌であり,新しい環境条件に対応して多発する癌である.主題の「肺癌は増えているか」という命題に対しては,「増えている」とはっきりいえる.
表1は年次別の肺癌死亡数である.1947年には,男520,女248だった肺癌死亡は,1974年には,男9985,女3729と増えてきている.男で19.2倍,女で15.0倍の増加である.呼吸器の結核死亡を1972年から上回っている(図1).この肺癌の年次別死亡に,2次式をあてはめてみると,表1のように,男女とも比較的よく合致している.そこで,それを延長し,将来数を予測すると,1982年には年間2万人を越え,1992年には,年間3万人を越えると予測される.
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