特別記事
日本の保健医療協力における看護分野の協力の実態と課題
平岡 敬子
1
1広島大学大学院社会科学研究科(博士課程)
pp.551-558
発行日 1995年11月15日
Published Date 1995/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686902232
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はじめに
第二次大戦後,急速な復興と経済発展を遂げた日本は,かつての被援助国から,世界有数の援助国となった.日本政府は,ほぼ毎年のように,ODA(政府開発援助,Official Development Assistance)の支出を増額している1).しかし,問題は援助の内容である.そもそもODAとは,開発途上国の経済・社会発展のためにだけでなく,国民の福祉の向上や,民生の安定に協力するために行なわれるものである.ところが,日本のODAは,途上国の経済発展に直結する分野に,非常に大きな比重をかけてきたので,その国民の福祉や生活の向上については,十分な実績をおさめていない.その典型的な事例が,保健医療協力である.日本政府は,保健医療協力を,開発途上国民のBHN(Basic Human Needs)に貢献する重要な協力分野であるといっているが2),そのために投じる予算は,ODA総額の3%ないし5%程度にとどまっている.ODA全体の中で,保健医療協力は周辺的な位置づけにある,と推定するほかはない.とすれば,看護にかかわる協力は,現在どのように行なわれ,どのような位置づけを占めているのであろうか.
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