連載 カウンセリングの現場から・8
支配する人 逃げられない人
信田 さよ子
1
1原宿カウンセリングセンター
pp.682-683
発行日 2000年8月10日
Published Date 2000/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686902004
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前回は,殴られている人たち(バタードワイフ)のことを述べたが,読み返してみると,なんとなく逃げない彼女たちのほうに問題があるような内容になっている。それは私の本意ではないので,もう少しそこのところをくわしく述べてみようと思う。
じつは,そのような誤解は珍しくはない。たしかに現象だけみれば,なぜあのような状況から逃げ出そうと思わないのだろうかと誰もが不思議になる。これまでは,「腐れ縁」とか,「業が深い」などと表現されてきた。つまり,女性の側が殴る男に執着しているからだという推測によって,いろいろな言葉がつくられてきたのだ。小説の題材としてもよく扱われ,いずれも女の業だとか,深情けとして描写されている。いずれも男の作家によってである。なんて男に都合のいい解釈だろう。
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