連載 実証研究・1【新連載】
千葉県下3病院にみる中小民間・「基準看護」非採用病院における看護労働
何が異なるのか―看護労働研究への接近視角
林 千冬
1
1東京大学大学院医学系研究科博士課程・保健社会学教室
pp.238-243
発行日 1992年7月15日
Published Date 1992/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901885
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課題と対象
問題の所在
"看護婦不足"が社会的問題としてクローズ・アップされている近年,行政担当者や研究者,有識者の問では,「看護婦」1)養成計画や需給問題,さらに(狭義の)労働条件などについての検討が盛んである.しかしこの"看護婦不足"問題は,決して近年に始まったことではなく,戦後数期のピークを経つつも2),看護現場においては,一貫して要員不足の状況が続いてきたことに疑問の余地はない.かつても今も,"看護婦不足"は,看護や「看護婦」への社会的関心を高めるひとつの契機になってきた.けれどもこれまで,こうした"追い風"を,看護をめぐる問題解決にうまく生かしきれてこなかったことは,個別の労働条件の改善状況ひとつを取ってみても明らかである.
一方,「看護婦」側の組織的な活動主体である各医療系労働組合や職能団体の日本看護協会は,その構成員が「看護婦」総体を代表するとはいいがたい点に,活動の大きな限界をはらんできた.医療系労働組合の組合員は,公的医療施設と一部の民間施設に就労する「看護婦」に偏り3),日本看護協会の会員は,公的あるいは大規模民間施設の看護婦資格所持者に偏っている4).
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