連続講座 保健指導の理論と実際・2
指導のための接近方式
田中 恒男
1
1東大・公衆衛生学
pp.66-69
発行日 1964年10月10日
Published Date 1964/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203235
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
保健指導のための対象が発見された段階で,私たちはどのような働きかけをすれば,もっとも効果的かを考える.管理体系下におく場合とは違って,多くの場合対象のもつ問題は個別的であり,かつ心理的・社会的な要素をふくむ.しかも一方では準拠枠(frame of reference)にのっとった行動や思考が阻害要因となっており,問題がばらばらなようにみえて底辺で準拠集団が関係してくる場合も少なくない.そこで,初果的な働きかたをきめるためには,その対象のおかれた社会的地位,あるいは問題の解決点とそれを構成する要因などについて十分考察し,その結果をまってふりわける必要がある.
今まで,ともすると結核や未熟児にはすぐ訪問,妊婦なら母親学級といった,やや公式的ともいえる働きかけのきめ方は,この問題の個別性や条件の差異という建前から考えるかぎり,乱暴きわまりないやり方だったといえる.対象に対しては,なによりもまず問題の診断が計られなければならない.その上ではじめて個別指導を適当とするか,集団指導によるべきかの判断が行なわれるのである.そこで接近方式をきめるための問題の診断を考えなければならぬことになる.
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.