連載 続・白衣のポケット・17
何もしなくていい
志水 夕里
pp.398
発行日 2002年5月10日
Published Date 2002/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901638
- 有料閲覧
- 文献概要
職場で異動をした。1つの病棟から出てみると,まるで世界が違うことに驚く。同じ病院の中でも,点滴の固定の仕方1つとってもさまざまである。科によってカラーも違うが,スタッフの人員構成にも,雰囲気は大きく左右される。雑多な中で,バラエティに富んだ患者さんと,共通理解や認識の統一を図るのは無理な面もある.まして,スタッフそれぞれの看護観の違いは,非常に微妙で多岐にわたる。いろいろな患者がいるのだから,いろいろなナースがいて,丁度よい。それが私の持論だったりするが,やっぱり,首をひねる事態も起こる。
久しぶりの異動で,初日からどきどきし,先輩の後について回る。初めてというのは,こんなに気を使い,緊張し,作業処理に時間がかかるものだったのだ。自分がそういう弱い立場にある時の先輩は,とても優秀で,学ぶべき点が豊富であるように思える。逆に,先輩のちょっとした眼差しや,一言で,傷つくことも,救われることも多く,敏感な時の周りの印象は,焼き付くように自分の中に残るものだ。慣れてしまえば,深く考え込むことも,注意を払い過ぎて能率が上がらないことも少なくなる。けれど,新鮮な疑問もどんどん少なくなる。新しい日々の違和感は大事にしたい。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.