連載 看護師の働き方を経済学から読み解く・9
異なる賃金決定メカニズムの並存
角田 由佳
1
1前 国立社会保障・人口問題研究所
pp.964-969
発行日 2002年12月10日
Published Date 2002/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901565
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前回は,看護師の賃金について,教育や経験等による技能の蓄積の差異を取り除いてもなお格差が存在するという,労働市場の「二重構造論」から検討した。そして看護師の労働市場が,一般の労働市場と同様に分断状態にあり,階層構造を呈しているという仮説を提示した。すなわち,看護師の労働市場の中でも,第1階層では,公的病院や学校法人立病院といった,看護師養成機関と採用上関連を持つ病院が労働需要者となり,新規学卒者や離職せずに継続就労する看護師を,比較的高い賃金で雇用する。一方,第2階層では,それ以外の中小規模の私的病院が労働需要者となり,結婚や出産,育児等でいったん離職し,再就労する看護師を,低賃金で雇用する。これにより,たとえ同等の技能を持っている看護師がいたとしても,所属する階層によって賃金に格差が発生し,高賃金階層には移動しにくい状況が生じている。
今回は,前回に引き続き,この二重構造仮説を検証し,看護師の労働市場では異なる賃金決定メカニズムが並存していることを明らかにする。そして二重構造の状況を引き起こす,日本の診療報酬制度の影響についても触れる。
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