連載 チーム医療の現場から医療制度を考える・11
「医食住足りて」日本はどこへ行く?
本田 宏
1
1埼玉県済生会栗橋病院
pp.889-891
発行日 2002年11月10日
Published Date 2002/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901547
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日本は姥捨山か
高齢者の自己負担が見直され,10月から実施された。高齢化社会の到来をかけ声に医療費兄直しが断行されているが,この問題を考える上で重要な提言が朝日新聞8月3日付の朝刊「私の視点」に掲載された。精神科医で作家のなだいなだ氏の「自殺者内実を映す統計はどこに」という一文である。
警察庁の資料によれば,この4年間,1年間の自殺者総数は連続で3万人の大台を保ち,60歳以上が全体の35.1%(1万891人),50歳台が25.4%(7883人),40歳台が15.0%(4643人)の順となっている。自殺者のうち「経済・生活苦」が理由とみられる6845人は統計を取り始めた78年以降で最多で,なだ氏はいじめを理由に中学生が1人自殺すると,過剰なばかりに反応する社会もマスコミも政治家も,60歳以上の老人が1万人以上自殺しているにもかかわらず,どうして社会問題にしないのかという疑問を呈した。さらに自民党首脳の一人が,来年度予算で,「公共事業の予算は削減するべきでなく,削るべきは社会福祉と教育予算だ」と講演したことに触れ,介護保険も加わり老人自己負担は大幅に増えているのに,さらに公共投資でダムや道路をというような政治家のもとでは,60歳以上の自殺者は増えこそすれ,減ることはないと結んだ。
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