連載 シネ・プロフィル・11
ヒロインはあの時のまま
片場 嘉明
1
1厚生中央病院・外科
pp.831
発行日 2001年11月10日
Published Date 2001/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901323
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戦後,洋画の洪水のなかで,日本人の涙を最も誘った映画監督といえば,前号紹介したマーヴィン・ルロイであろう。終戦の翌年,『キュリー夫人』が公開され,グリア・ガーソンの賢夫人ぶりが話題になった。その前年の作「心の旅路』が引き続き公開され,女性層の心を完全にとらえた。
ガーソンはワイラー監督の『ミニバー夫人』でオスカーを獲得し,上品な夫人物を持ち役としたが,わが国では,やはり『心の旅路』が最も印象深い。戦争の後遺症で記憶を失った男を,親身になって助ける踊り子の大メロドラマであり,監督の得意とする悠揚たる演出により,最後の最後に彼が記憶を取り戻すシーンは涙なくしては観られないと評判になった。当時の日本では記憶喪失症は耳慣れない病気で,なんとプログラムに精神科の式場隆三郎博士の解説が載っている。
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