今月の主題 輸血の安全管理
巻頭言
輸血の安全管理―輸血による不幸を生まないために
紀野 修一
1
,
伊藤 喜久
1
Shuichi KINO
1
,
Yoshihisa ITO
1
1旭川医科大学病院臨床検査・輸血部輸血・細胞療法部門
pp.131-132
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101513
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輸血は出血を伴う患者の治療や移植医療を行うために不可欠な補助療法である.売血時代には輸血後患者の約半数に輸血後肝炎が発生していたが,行政や日本赤十字社の間断ない努力により輸血用血液の安全性は飛躍的に向上し,現在では輸血後肝炎の発生は著しく減少した.しかし,輸血用血液に潜むウイルスの検査精度向上によっても,ウィンドウピリオド内の血液を輸血することによるウイルス伝播は根絶されていない.また,細菌により汚染された血液を輸血したことによる死亡例も報告されている.さらに,輸血による新興・再興感染症,プリオンや未知の病原体の輸血による伝播の可能性が最近問題となっている.
輸血は非自己の血液細胞を移植する行為である.したがって,放射線照射により防げるようになったGVHD(graft-versus-host disease;移植片対宿主病)のような自己細胞を攻撃する重篤な副作用が発生したり,非自己の抗原が移入されることによって免疫反応が生じ,ABO血液型不適合輸血のように最悪の場合には受血者に死をもたらすこともある.また,輸血関連急性肺障害のように受血者の生命にかかわる重篤な非溶血性副作用も存在する.
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