特集 病院における死後の看護
―産科における死後の看護―新しい命を失った家族へのサポート
田中 美枝
1
,
安部 陽子
1
1兵庫県立こども病院
pp.178-183
発行日 1999年3月10日
Published Date 1999/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900969
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先日安部は,新生児科の医師,病棟婦長,スタッフ3名が,当院の周産期医療センターの玄関からタクシーに乗り込む患者・家族を見送っているのを見た.後でその時の様子を婦長にたずねると,3か月間の入院治療の甲斐もなく不幸にして亡くなった児の両親が,児とともに帰宅するのを見送ったとのことだった.元気で退院する子どもとその家族も,不幸にして亡くなった児とその家族も,同じように通常の出入口を使っているということであった.
おくるみに児をくるみ抱いて帰る家族,ベビー用のかごに入れて連れて帰る家族など,今までにさまざまな場面に出会った.当院においてはこのような情景は珍しくないが,赴任したばかりの安部にとっては,亡くなった児と両親が,元気に退院する児と両親と同様に正面玄関から帰宅するのを見るのは,初めての経験であった.それまでに勤めていた循環器病センターでは,亡くなった方専用の出口を利用していたからである.そして,専用出口は人目を避けるように地下に設けられていたり,職員のみが使用する出口の近くであったり,なぜか人目から隔離された場所にあった.
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