特別記事
援助論は援助者論である―"アディクションアプローチ"から見えたこと
信田 さよ子
1
1原宿カウンセリングセンター
pp.789-792
発行日 1999年10月10日
Published Date 1999/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900913
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はじめに
母親に抱かれた子どもがこちらを見ている.大きく見開いたその目は表情がなく,凍りついているかのようだ,何年か前にエゴン・シーレ展で初めて目にして強く惹かれたこの絵「母と子II」は,多くの画家が描いた数えきれないほどの母子像の中で全く異色である.母と一体となって描かれているのに,画面には温かさのかけらもない.
これまで疑うべくもないとされていた家族にまつわる常識が疑われなければならない時代がきている.母子の愛は自明ではない.家族こそが居場所ではなく,家族は危険な場所である.そのような臨床を通して蓄積された実感を,エゴン・シーレの描いた「母と子II」に感じた.それゆえこの絵を『アディクションアプローチ』を書き上げたとき,表紙に使ったのだった.
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