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はじめに
ひきこもり事例へのアプローチは,それらの事例が自ら相談機関や医療機関を訪れることが稀なため,多くは家族のみの相談というかたちで開始される。精神科臨床で伝統的な個人面接や投薬を中心とした診療に馴染んだ臨床家にとっては,本人を受診させなければ診療にならないと感じられることも多く,実際にそのように家族に対応する場合も少なくないものと思われる。さらに,現行の社会保険診療の制度上も,本人の受診があって初めて保険診療が開始できるため,家族のみの相談では費用的な負担が増すことも,医療機関で家族の相談を受けにくい背景となっていると言えよう。
しかし,今日のように「ひきこもり」の問題が広く認識され,精神医学的な対応が求められるようになると,家族の相談を受け入れることも大切な臨床の一形態となる。また,家族にとって精神科医療機関へ相談に訪れることは,相当の決心であったはずであり,その家族の相談が唯一の問題解決の糸口となることも稀ではないことを考えると,その機会を受け止めることは,臨床家の大切な役割と言うことができよう。
現在,厚生労働省でも研究班を中心にひきこもりへのアプローチのガイドラインが作成されているが,その中でも家族援助の重要性が指摘されている3)。
そのような意味で,ひきこもりの臨床にとって,家族へのアプローチは特に大切な一歩となるのである5,6)。
本稿では,家族療法,家族援助の考え方を基礎にしながら,ひきこもりの青年を持つ家族へのアプローチについて述べてみたい。また,本稿で述べることはひきこもりの問題に限らず,他の問題における家族への臨床的アプローチを考える場合にも応用可能であると考えられることも付記しておきたい。
なお,最近のほぼ共通した見解であろうと思われるが,筆者も「ひきこもり」を,単一の疾患や障害ではなく,また統合失調症や他の比較的重篤な精神疾患に付随する閉居とは区別し,家族以外の他者との接触をおよそ半年以上の長期にわたり避け続け,主に自宅に閉居している青年期以降の青年たちととらえている3,4,10)。
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