連載 めざすは正義の味方 月光仮面 福祉の現場から・7
援助しない「援助」
内山 智裕
1
1埼玉県立大学保健医療福祉学部社会福祉学科
pp.985
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662100183
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私はこの世話人業務において,援助しない「援助」を大切にしている。
私がいるグループホームの利用者の多くは家族と住んでいた。両親の高齢化に伴う将来の不安から,自立と継続的な援助を求めて入居してきたのだ。
彼らの多くは,洗濯をしたことがなかった。しかし,入居して1年が経ついまでは,すべての入居者が自分のものは自分で洗濯している。彼らは洗濯を「できない」からしなかったのではなく,「できる」のに「する機会がなかった」のだ。
しかし日常生活において,彼らが「できる」ことが増えてくると,私は嬉しい反面,居心地の悪さも感じてしまう。それは,私が何のためにいるのかという,存在意義が危ぶまれているからだろう。彼らは障害ゆえにどうしてもできないことはもちろんあるわけだが,生活パターンができあがってくると,彼らが援助者を必要とする場面は影をひそめ,なお一層私の存在感は薄くなる。
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