連載 裁判例にみる看護婦の専門性・1【新連載】
看護婦の業務の法的解釈
高波 澄子
1
1北海道大学法学部
pp.52-55
発行日 1998年1月10日
Published Date 1998/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900717
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連載開始にあたって
一昨年,本誌に連載された,奥野善彦著「人間として,医療人として──東海大『安楽死』事件はわれわれに何を教えたか」(第6巻第1-4,6-9号掲載)は,マスコミを賑わせた,あの東海大「安楽死」事件について,その裏にあるさまざまな問題をわれわれに提起してくれた.特に,第4回の「続・看護者たちの逡巡」は,この事件の裁判の過程に,看護婦が一度も現われなかったことへの疑問を投げかけたものであった.すなわち,看護婦こそ事件の一部始終を知り得る立場にあり,被告医師が行なった医療行為に直接あるいは間接的にかかわっていたはずなのに,なぜこの事件の捜査に当たった検察官も被告医師の弁護人も,看護婦にいっさい目を向けなかったのか,という疑問である.
私はこの論文を,かつての私の上司であったN看護部長に勧められて読んだ.N看護部長は,この論文を読んで,今さらながら医療現場での看護者の立場の曖昧さを痛感したようである.そして,現在法律を専門として,医療過誤裁判例の分析に時間を費やしている私に,この事件についてどう思うかを問うたのである.これを読んだ私自身も,看護婦の役割が社会一般に正当に評価されていない状況を痛感し,そもそも看護婦の業務とは何かを,法的な側面から考えてみようと思い立ったという次第である.
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