連載 かれんと
自立神話とラクちん志向
中山 一樹
1
1鹿児島県立短期大学
pp.637
発行日 1997年9月10日
Published Date 1997/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900694
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今年度から企業と大学間の就職協定が廃止された.案の定,就職戦線は前倒しになり,内定獲得は夏前には決着がついてしまった.そうした動向はキャンパスの中に殺伐とした雰囲気を漂わせている.受験戦争が終わった後には,キャンパスライフで一息つく間もなく労働市場への参入競争が迫っていたという構図だ.休息時間は短くなり,心理的な圧迫はますます強まってくる.
ある時こんな光景に出会った.会社訪問に精を出すリクルートスーツ姿の先輩たちを見やりながら,4月に入学した学生たちが「人生ラクしたいよね」「そうだよね」「ラクしたーい」と合唱しているのだ.キャンパスの新人である"PUFFY"たちにとって,先輩のリクルートスーツ姿は,過剰な自立志向に煽られた姿と映るのだろうか.この社会が課す性急な自立誘導とそれへの反発であるラクちん志向が,「ラクしたーい」という言葉に投影されているかのように聞こえる.
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