〔Ⅳ〕私の經驗
「ものもらい」の手術と「よーどちんき」
井上 達二
pp.94-95
発行日 1947年5月20日
Published Date 1947/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200198
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「ものもらい」は通俗語で,眼瞼にできる腫れ物を總稱する言葉であるが,こゝでは術語のHorde-olum (Hordと略)麥粒種とChalazion (Chalと略)霰粒腫の手術を取りあげて,筆を進めることにする。
一般にHordの手術療法としては,なるべく痛くない樣にするはもちろんであるが,瘢痕を殘さぬ樣にすることは一層大切である。この病のごく初期には温罨法や點眼などで時期を見送ることもあるが,既に膿點が見えて來れば,その頂點を鋭利なGraefe刀で一突き突くだけに止めることがある。切ると云う程でもないから,手術を好まぬ子供などでも,あつと云う間に處置は濟んでしまう,排膿を促し經過を短縮するためである。しかしその切り口は自然に破れて來る孔よりも大きくならぬ樣に注意する。その翌日もし硬い膿が創口に引つかかつて,排膿を妨げて居れば,1-2囘小鋭匙でその膿だけを抄い出すことも,稀には要するが,普通は掻把せずとも,そのまゝで治つてしまう。
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