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「生れる」ことの神話
pp.39
発行日 1959年2月1日
Published Date 1959/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201625
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ヤマトタケルノミコトを話の主人公にした劇映画ができるそうである.古事記,日本書紀にある「国うみ」からはじまつて,古代日本の神話,伝説,帝紀などをとりまぜた映画だそうだから面白そうだ.それもただ皇室バンザイに終始せず,多少の科学的批判を加えたものなら,なお面白いのだが——.神武天皇を,征服欲にもえた野バンな武将にでもしたら面白い.「隠し砦の三悪人」の三船敏郎,あれが神武天皇である.
神話によると,神武天皇の2〜3代前の神様に,ウガヤフキアエズノミコトという人がいる.その人の母君は、もともと海の精であつたのに,人間の姿をかりていたのだという.妊娠し,お産がはじまつた.が,そのとき彼女は御亭主に「私が子供をうんでるところを見ないでくれ」と頼んで産室を造りにかかつた.カヤブキのような小屋である.ところが,その小屋が完成しないうちに子供が生れた.名附けてウガヤフキアエズノミコト.さぞかし愛嬌のある子供だつたろう.
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