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はじめに
クリニカルパスを取り巻く課題
クリニカルパス(以下,パス)は「患者状態と診療行為の目標,および評価・記録を含む標準診療計画であり,標準からの偏位を分析することで医療の質を改善する手法」と定義されている1)。パスの導入目的は,医療の標準化や質の向上,業務の効率化と能率化などであり,日本の200床以上の病院におけるパスの普及状況は,2003年の82%から2018年は93%に増加している2)。一方,パス導入後の課題として,アウトカム評価やバリアンス分析註)を行えていないことが挙げられており2),新規作成後の見直しがされず,十分に機能していないパスが山積している可能性がうかがわれる。
大阪大学医学部附属病院(以下,当院:表1)の小児医療センターでは,2022年4月時点で小児外科領域に関して7つのパスを導入し,使用していた(表2)。しかし,経験則から使用頻度が高いと予測されるパスを作成して使用することにとどまっており,パスの記録状況を可視化するなどの導入後の評価が行われていないことや,根拠を持ってパスを改善すること,パス適用が可能な手術を系統的に同定することなどが課題であった。
近年,電子カルテなどの電子的な患者の医療情報(Electronic Health Record),医療機関や調剤薬局から出される診療報酬明細書(レセプト)のデータ,大規模コホート研究のデータなど,さまざまな医療ビッグデータを活用する動きが活発化している5)。看護管理者にとって,パスを推進することは看護の標準化や質向上につながるため重要であるが,パスの推進のために病院情報システムのデータベースに日々蓄積される膨大な電子カルテデータ(以下,データ)を活用したという報告は多くない。本稿では,データを活用して現行のパスの使用状況を分析し,その結果を踏まえて❶現行のパスの改善,❷パスの新規作成,および❸記録状況の可視化を行ったので報告する。
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