連載 キャリア形成に悩むあなたのためのリレーエッセイ わたしの師長時代・14
師長として大切にしたいこと
橘 幸子
1
1福井医療短期大学看護学科
pp.516
発行日 2018年6月10日
Published Date 2018/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686201001
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「どんな仕事に就いても親分を目指しなさい」という祖父の口癖が,私の中でいつの間にか,“看護師を続けていくなら絶対に看護師長になる”という目標となっていました。就職後は忙しい毎日を過ごしていましたが,経験年数を重ねるに従って,患者さんやその家族の心情に触れ,ともに泣き,ともに笑い,看護の素晴らしさ,面白さを積み重ねてきました。看護教員に進む道もあったのですが,看護師長の「あの子は臨床向きだから」という判断で,道は閉ざされたようでした。それを知ったのはずいぶん後のことになりますが,もし私に判断を求められていたなら,その後の看護人生は違うものになっていただろうと想像しています。それから10数年後の1992年4月に看護師長に昇任しました。
昇任した時に強く考えたことは,さまざまな考えを持つスタッフの気持ちを尊重し寄り添うということでした。“あの人はこんな人だから”と決め付けることなく,自分の眼で見て確認する,与えられたチャンスは必ず伝え,相談に乗りスタッフ自らが選択できるようにということに注力しました。「チャンスはどこにでも転がっている。ただそれをつかむことができるのは常に努力している者だけだ」というチャールズ・チャップリンの名言を私の座右の銘としています。チャンスをつかむかつかまないかは当事者の判断ですが,来ているチャンスを知らせることなく上司の判断でつぶしてしまうことはあってはならないと思います。キャリア形成を図る上でも,さまざまな機会を提示し,本人の判断をサポートしながら決定していくことは,人の上に立つ人間の心得ではないかと考えます。
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