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はじめに
2025年に日本は団塊の世代が75歳を迎え先進諸国の中でも類を見ない超高齢多死社会となる。人口構造の変化に対応するため恒久的に維持可能な社会保障制度を目指し改革が進められている。2018年には診療・介護報酬が同時改定され地域医療構想による病床機能の調整が始まり,地域包括ケアシステムも見える形になってくるであろう。
臨床現場では疾病構造の変化や技術の進歩により医療は高度・複雑化している。さらに,利用者ニーズは多様であり高齢者や認知症患者の増加は現場を圧迫している。この現状に対応すべく多職種の役割分担や連携が推進され,看護職やそのほかの医療専門職の役割拡大が火急に進められている。
年老いても人々が地域で暮らし必要な時に医療を受けるためには,地域包括ケアシステムの構築が必須であり,ケアの担い手である医師や看護師などの人的資源は量と質,ともに重要である。
2008年政府の社会保障国民会議の医療・介護提供体制シミュレーションでは,2025年までの改革のシナリオと医療従事者の必要数が推計され,看護職は約200万人であった。しかし,その両者が十分に見込める地域はまだ少ないのではないかと推測する。そのための対応策は第6次医療法改正において,病院・病床機能の分化と連携,医療機関における勤務環境改善の努力義務化,特定行為に関わる看護師の研修制度などによるチーム医療の推進に表れている。
厚生労働省は勤務環境改善に向けて全都道府県に医療勤務環境改善支援センターを設置し医療環境改善マネジメントシステム導入の手引きを公表している1)。日本看護協会は看護職のワーク・ライフ・バランス普及推進事業を各地で展開してきた。これらのさまざまな活動により,日本看護協会病院看護実態調査によると離職率は2005年の12.3%から2015年の10.8%2)へと経年的に低下しているが,勤務環境の改善は継続的に取り組むべき課題である。
また,専門看護師(以下,CNS)や認定看護師(以下,CN)などは各分野でエビデンスを確立し,多職種チームによる横断的な活動により疾病の回復に対して多くの実績を挙げ,ひいては質の保証,向上に寄与している。さらにその看護技術は診療報酬の評価対象となった。
今後,看護実践能力に秀でた看護職は自施設に留まらず,地域包括ケアシステムの中で医師が少ない施設や在宅において活躍が求められる。特に「特定行為に係る看護師の研修制度」修了者による専門的な役割の拡大が期待されており,内閣府規制改革会議ワーキンググループでは在宅での看取りにおける規制の見直しの審議が始まっている3)。暮らしの中に人生の最終段階があり看取りが想定されるため,医師が速やかに立ち会えない環境であっても,安らかな看取りが阻害されないように地域を整えていかなければならないと考える。いずれにしても看護職が2つ目のライセンスを持つ時代が来たのである。
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