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はじめに
人口の高齢化に伴い,病院から住み慣れた地域での療養へとスムーズに移行するための退院支援や地域連携づくりがより重要視されるようになっている。このため急性期病院では,在宅移行支援のためのシステム化が図られ,退院支援部門を中心に地域との連携のためのさまざまな活動が行われている。
このような一連の取り組みの中で,病棟看護師には退院後を視野に入れた情報収集や,意思決定支援の役割が期待されている1-3)。ここには急性期医療の場とは全く異なる生活の場を想定した患者のニーズがあり,鋭い観察力や高いコミュニケーション技術が求められることから,繁雑な日常業務の中で退院支援を行っていくことは大きな課題になっている。
筆者らは,近隣の訪問看護ステーションへ出向き,杏林大学医学部付属病院(表1)を退院して訪問看護を利用している患者の事例検討会を開催している。この会は,病棟看護師と退院支援リンクナース,退院支援部門の看護師や医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)が,退院後の患者の生活状況を知り,これを含めて病棟での退院支援について振り返る機会をつくること,事例検討会での気付きを各自の退院支援に活かせるようになること,病院から訪問看護ステーションへ出向くことでより密な連携が図れるようになることを目指している。
この事例検討会が開かれるようになったきっかけは,病院内に患者支援センターが設置され,よりよい患者支援につながる地域連携の方向性を模索していた看護部と,在宅看護学実習や地域での多職種会議などを通して,近隣の訪問看護ステーションと大学病院とのよりスムーズな連携の必要性を感じていた看護学部の教員とが,院内の在宅緩和ケアに関する講演会で偶然に出会ったことであった。
その後,院内で地域連携に取り組む看護師やMSWが,在宅ケアサービスを提供する事業所で開催されている事例検討会に参加し,当院を退院した患者の自宅での暮らしぶりを知ること,そこから退院に関わる支援を振り返りどのようなケアを行っていくべきかを考えることの必要性を実感した。また,その方法として入院中と退院後に関わったスタッフによる事例検討が有用であり,「顔の見える連携」にもつながるだろうと考えた。
このような経緯で始まった,病院から訪問看護ステーションへ出向いて行う事例検討会がもたらす,退院支援や地域連携への効果の可能性について述べる。
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