連載 師長の臨床・9
看護の知の水脈から読み解く師長の臨床―井上ひさし『吉里吉里人』
佐藤 紀子
1
1東京女子医科大学看護学部看護職生涯発達学
pp.400-403
発行日 2013年5月10日
Published Date 2013/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102769
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連載の過去2回は,幸田文の『闘』1)と江川晴の『婦長物語』2)をとおして,文学に潜む師長の臨床の知の水脈3)をたどることを試みた。幸田文の『闘』は1950年代(昭和30年代)頃の結核療養所の師長たちの姿が,病院の付き添い婦の視点から描かれている。また,江川晴の『婦長物語』は1990年代(昭和62年頃)の,医療行政が大きく変化する時代の渦中に,医療の最前線でその変化の波を受け奮闘している師長たちの姿を描き出していた。いずれもある時代における師長という役割をもつ看護師の姿を現わすものであった。
作品が出版され四半世紀以上が過ぎた今,これもまた圧倒的な看護師不足に悩まされている看護師長たちがおかれた状況から眺めると,当時の臨床が意味あるものとして読み取れることに驚かされる。
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