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13年前の初夏,私はニューヨークにやってきた。アイスコーヒーがほしい季節で,アイスコーヒーはアメリカから日本に伝えられたと思っていたので,コーヒーが買えそうなお店に入ってはアイスコーヒーを探したが,当時はどのお店にもアイスコーヒーはなかった。スターバックスにもフラペチーノしか冷たい飲み物はなかった。物心ついたときから日本のマクドナルドにはアイスコーヒーがあったので,まさかニューヨークのマクドナルドにアイスコーヒーがないとは露ほども思わず注文し,カウンターの店員にひどく怪訝な顔をされたのは忘れもしない。私の英語の発音のせいではないかと思い,指でスペルをなぞってみたり,“Cold”コーヒーと言ってみると,ますます肩をすくめられた。結局,コーヒー“with ice”というと,とりあえず,アイスコーヒーにありつけることがわかったが,味はといえば,何もしなくても薄めのアメリカンコーヒーが,ホットがアイスになるまで氷を足すとどのような味になるか,容易に想像できるだろう。ともかく,ホットコーヒーは水やジュースよりも安いので,コーヒーwith iceは当時学生だった私には貴重な夏の飲み物だった。今や,夏にコーヒーを注文するとホットかアイスかと確認されるほどに常識は変わった。
ところで,先日こんなにコーヒーが大好きな私にうれしい研究結果が発表された。コーヒーを多く飲むほど,死亡率が下がるというものである1)。コーヒーを飲まない人たちと比較すると,1日1杯飲む人の死亡のオッズ比は男性では0.94,女性では0.95,2~3杯ではそれぞれ0.90と0.87,4~5杯では0.88と0.84,6杯以上では0.90と0.85だった。死因別にも分析されており,コーヒーをより多く飲む人では,飲まない人よりも心疾患,呼吸器疾患,脳卒中,外傷や事故,糖尿病,感染症による死亡オッズ比が低かった。しかし,がんに関してはこの関係が見られなかった。
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