研究報告
実験下での看護師の注射業務の水準(安全確認行為の実施状況)の検証―刑事責任の観点から
奥津 康祐
1
,
松下 由美子
2
,
小林 美雪
2
,
森本 美智子
2
,
城戸口 親史
2
,
笠井 英美
3
,
藤森 玲子
4
,
大石 操
5
1東京大学大学院医学系研究科
2山梨県立大学看護学部
3甲府城南病院
4北杜市立甲陽病院
5山梨県立北病院
pp.142-146
発行日 2010年2月10日
Published Date 2010/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101679
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近年の看護過誤の刑事訴訟裁判例では,背景要因にかかわらず看護師に対してもれなく医療(看護)水準以下という判断(有罪)がなされている。その判断は正しいといえるだろうか。今回は,現実の医療(看護)水準について注射業務に焦点をしぼり検証しようと考えた。看護師27名を対象に,ナースステーションおよび病室が再現された実験室で,注射業務を行なう実験を実施し(各人2回ずつ),スタンダードな安全確認の項目(テキスト的実施事項)の実施状況を観察した。その結果,テキスト的実施事項の実施率平均は1回目で57.9%,2回目で50.8%であった。2回目でアクシデント状況が7名(9例)で発生した。テキスト的実施事項の実施状況は十分ではないこと,背景要因次第で多くの看護師がアクシデントの当事者となる可能性があることが示された。法的判断の際,マニュアルやテキストの記載をもって医療(看護)水準だと即断してはいけない。
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