特集 どう対応する 医事紛争時代
医療過誤における民事・行政・刑事責任のあり方
神谷 惠子
1
,
山田 奈美恵
2
1神谷法律事務所
2朝日生命成人病研究所附属丸の内病院
pp.470-475
発行日 2007年6月1日
Published Date 2007/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100952
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2006年2月,福島県立病院の癒着胎盤・前置胎盤症例の出産で妊婦が死亡した事例で,産婦人科医師が逮捕・起訴された.こうした医療事故への過度の刑事介入は,医療界の強い反発を招いている.たしかに医療界の閉鎖性を改善するうえで,近年の刑事責任の追及が果たした役割は認められる.しかし,本来最終手段であるべき刑事責任が民事・行政責任に先行している現状は,特にリスクの高い医療分野での萎縮を招き,医療の崩壊を進める一因となっている.加えて,これまで多分に医療従事者の志気によって支えられてきた現場も,その志気低下により医療崩壊の拡大へと繋がっている.2007年3月には国立循環器病センターICUの医師団が辞任することとなった.医療崩壊は,国内有数の中核病院においても起こり始めている.この原因は複数あるだろうが,多角的かつ同時進行の改革を行わなければ問題解決には至らない.そして,もはや一刻の猶予もない.
そこで,不幸にして医療事故が発生した場合に,再発防止を機軸として,3つの法的責任,つまり刑事・行政・民事責任のあり方を特に刑事,行政責任を中心にして考察し提言する.なお,詳しい各論については,本誌7月号からの連載に譲る.
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