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はじめに
1999(平成11)年,日本の医療のあり方を大きく変える契機となった重大な医療事故が発生した。私は,この事故が大きく取り上げられている最中,日本看護協会の常任理事となり,医療事故防止対策等看護業務に関連する分野を担当することとなった。
この時期に社会的な問題となった事故は2つあり,1つは患者を取り違えて心臓と肺の手術を行なった「患者取り違え事故」であり,もう1つは消毒薬をヘパリン加生食と間違えて静脈内に注入した「消毒薬誤注入事故」である。いずれの事故も,新聞などのマスコミに大きく取り上げられた。その後,内服薬をIVHのルートに誤注入する事故や人工呼吸器の加温加湿器に蒸留水と間違えてアルコールを注入し続ける事故などが起きたが,いずれの事故も,間違いを直接患者に届けたのは看護師であり,看護師が刑事責任を問われることになった。
私は,このような事態を受けて,早急に安全対策を検討する必要があると考え,私が理事になる前から立ちあげられていたリスクマネジメント委員会(委員長 井部俊子氏)で,「組織で取り組む事故防止――看護管理者のためのリスクマネジメントガイドライン」を作成し,広く会員施設に送付するとともに記者会見を開いて,看護師が事故の当事者になりやすい状況や事故を起こしにくい環境を整備することの重要性を訴えた。
当時は看護業務に関連するさまざまな視点からのリスク管理が重要視されるようになってきた時期であったことから,他に「看護記録の開示に関するガイドライン」や「看護業務に関連する健康障害を防止するためのガイドライン」なども作成した。そして,2001(平成13)年に看護協会の常任理事を辞任する最後の仕事として行なったのが,看護職賠償責任保険制度の構築である。
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