連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・42
謙虚なバイオリン,小さなやさしい心―『もぐらのバイオリン』『ゆきのまちかどに』
柳田 邦男
pp.52-53
発行日 2009年1月10日
Published Date 2009/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101400
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――アンデルセンって,すごいなあ。おそらく1000年たっても読みつがれていくだろう。ギリシャ神話や源氏物語が,21世紀の現代においても,まったく色褪せることなく読まれているように。
新作絵本を読んでいると,時折そんな思いが頭の中をよぎる。現代に生きる絵本作家が現代の状況のなかで創作した作品であっても,そこで表現されるテーマが,夜更けの街の一角を照らす窓明かりのように,庶民の心のやさしさとか,思いやりとか,謙虚さといった普遍的なものであり,しかもモチーフが子どもとか動物といった小さな存在であると,作者自身は意識していなくても,《どことなくアンデルセン的な香りがするなあ》と,私は思ってしまう。
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