シネマ解題 映画は楽しい考える糧[61]
「屋根の上のバイオリン弾き」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.549
発行日 2012年7月15日
Published Date 2012/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102556
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伝統と寛容の間で悩む父親の姿
シェルドン・ハーニック作詞,ジェリー・ボック作曲,ジョン・ウィリアムズ編曲による素晴らしい楽曲とオーケストレーション.美しい映像と圧倒的迫力の舞踏で構築された3時間です.アイザック・スターンのバイオリンソロが素晴らしい.40年たった今も,その魅力はまったく色褪せていません.また間違いなく文化,宗教,世代,倫理など人間理解に関わる重要事項を楽しみながら学ぶことができる作品になっています.ユダヤ共同体の一面を垣間見ることもできるでしょう.
日本でも超ロングランになっている著名なブロードウェイ・ミュージカルなので,物語をご存じの方も多いでしょう.帝政ロシア下,ウクライナ地方の小さな村アナテフカに住むユダヤ人テビエは五姉妹の父.他の村人と同様,ユダヤの戒律を守りながら慎ましく生活していました.テビエと妻は年頃の三人の娘によい縁談―親の眼鏡にかなう,できれば裕福な男性の妻に―を願いますが,娘らは各自相手をみつけテビエを驚かせ,悩ませます.なぜなら当時その村の娘たちは,父親が選んだ相手と結婚するのが慣わしになっていたからでした.
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