連載 医療コンフリクト・マネジメント 医療メディエーションの実践・11
臨床現場の不確実性に自覚的であること
中西 淑美
1
1大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
pp.154-160
発行日 2008年2月10日
Published Date 2008/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101143
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医療メディエーションの実践におけるもうひとつのウィル
医療メディエーションは,臨床の医療現場に生起するさまざまな事柄について,鳥の眼で俯瞰するだけでなく,虫の眼で見る作業でもある。それゆえ医療メディエーターは,両当事者の声を聴くために,その医療行為実践の背景に鋭敏であることが前提になる。
「声」のありかに耳を澄ます医療メディエーターは,「受容共感に長けている」「コミュニケーション能力が高い」といった素質論だけでなく,「医療の現場をよく知り,両当事者の苦悶や悲嘆について,両当事者の視点で判断や分析ができる」能力が必要である。これは,連載第4回(2007年7月号)で述べた,「紛争解決へ向けたスキル(技法)に宿るウィル(意思)」のほかに存するもう1つのウィル,すなわち自分自身に向けた鼓舞激励としての,自己承認へのウィルを供与することにもつながる。とりわけ,事案が苦情レベルではなく,医学的にも社会的にも複雑になればなるほど,実践はこれらのウィルに左右される。
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