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病院内の自殺事故に関する調査
以前,本誌においてわが国の自殺問題,および病院内の自殺事故問題について述べた(入院患者の自殺を防ぐために─必要な知識と対応.看護管理,17(10),858-865,2007)。そこで,わが国において安全管理に関する意識の高い病院であっても,全体でみるとかなりの数の自殺事故が生じていること,一般病院ではがん患者の自殺が全体の3割以上を占めていたこと(図1),少なくても患者の約半数に自殺の危険因子や自殺を示唆する言動が認められていたこと,自殺が主要な医療事故であるのにもかかわらず学習機会がほとんど設けられていないこと,そして自殺事故の当事者となった医療スタッフへのケアがほとんどなされていないことなどを述べた。これらのデータは,2005年に財団法人日本医療機能評価機構・認定病院患者安全推進協議会に設置された検討会が実施した大規模調査によるもので,詳しい結果とその後の提言内容は,それぞれ患者安全推進ジャーナルの13巻(64-69,2006)と,17巻(6-10,2007)に掲載されている。なお,アメリカでは,第三者医療施設評価認証機構,Joint Commission for Accreditation of Healthcare Organizations(JCAHO:現JC)が,自殺事故が病院内の重大事故件数として主要なものであることをすでに報告し,1998年に警告を発している。
先の国内の調査や提言は,わが国の自殺問題が1998年以降,特に深刻の度合いを深めていることを背景に行なわれたものであったが,その後もわが国の自殺問題は数値上では大きな改善は認められず。自殺者数は,昨年まで14年連続で年間3万人を超え,自殺率(人口10万人対の自殺者数)は先進国中で最悪の水準のまま推移している。
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