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はじめに
当院は47床の小規模病院(内科,外科,整形外科混合)であるが,近年の医療界の激しい変化のなかで,地域に必要とされる一般病院として生き残ることを決断し,その時から病院職員のモチベーションが今までより一層必要とされるようになった。そのため,職員のモチベーション高揚を目的として,2004(平成16)年度より人事考課制度が導入された。
しかし,評価する側は,部下の処遇にまで反映される評価を何の訓練も受けないまま実施することに不安をもっており,部門によっては評価結果に寛大化傾向や中心化傾向が見られた。また,職員には評価基準が明示されておらず,職員は公正な評価がなされているのかという不信感をもっていた。
松田は,「人事評価の結果は,必ず昇給,賞与,昇格,人事異動・配置や教育訓練などにハネ返っているし,またそれが当然の措置である」「しかし,人事評価の主目的は,部下の能力の把握と活用に用いることを,優先させる点にある」と述べている1)。また楠田らは,「看護職における人事考課導入のねらいは,まさに看護職として最新の技術を修得することと,患者理解による『患者満足の看護サービスの提供』です」2)と述べている。人事考課制度の導入により,われわれ管理者は,自分の評価が部下の給与や処遇に反映されることを自覚する一方で,人事考課が「求められる看護師」を育てるための人材育成の手法の1つでもあることを忘れてはならない。部下の処遇に反映されるに値する公正な評価と,人材育成という2つの目的に見合った結果を出せるようになることが必須である。
また,部下に対して評価基準を明示し,評価を絶対評価とすることで,評価される側が自己を振り返る機会とする必要がある。それにより,部下にとっては自身の努力すべき方向性が明確になり,また上司からの評価を知り自分への期待を共有することで,モチベーションの向上に役立つと考える。
これらを踏まえ,より適切な評価結果を得ることを目的に評価者訓練を実施したので,その経過と結果に考察を加えて報告する。
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