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はじめに
現在,日本の助産師の就労者数は2万5257人(2004年,厚生労働省医政局看護課調べ)1)で,1万7539人(68.2%)が病院に,4111人(18.0%)が診療所に勤務している。日本における出生場所別出生割合をみると,2004(平成16)年では病院51.8%,診療所46.6%となっており,出生割合と助産師の就労場所を比較すると診療所における助産師の就労が圧倒的に少ないといえる。
2005年末に行なわれた坂元らの「助産師充足状況緊急実態調査」2)から,出産を扱う産科施設の75%で助産師が不足し,その不足数は約6700人に上っていることが明らかになっており,助産師の就業偏在やその人数の少なさが問題となっている。そのため日本産婦人科医会では,「スタッフ不足の過重な負担を避けるため,現在は容認されていない,看護師が分娩前に妊婦の容体を監視・管理することを認めてほしい」という発言さえみられている。2006年8月末には,神奈川県内の産科病院で保健師助産師看護師法で違法とされている看護師・准看護師による助産行為を47年以上にわたって続けていた実態が明らかになり,利用者の間に衝撃が広がった。この報道により,個人病院や診療所における助産師の就労者不足は多くの産婦人科の医療機関で深刻な問題となっていることが社会的に認知された。
一方,日本の周産期医療体制は,出生数が下降の一途をたどるなか,産科診療の不採算,出産を取り扱う産科医師の就労偏在や不足から,産科病棟を廃棟する病院も多く,診療所においても分娩を取り扱わないところが増加していることが,日本産婦人科学会の全国周産期医療データベースに関する実態調査3)で明らかにされている。
産科病棟の廃棟が相次ぐなか,助産師はどのように就労しているのであろうか。ほとんどの産科医師は専門医として他の病院に異動するが,助産師は産科病棟が廃棟になっても家庭の事情などがあり病院を移るケースは少ない。その結果,看護師免許を有する日本の助産師は同じ病院内の他病棟に異動し,助産師としての専門性を発揮できない病棟で看護師として働く,いわゆる施設内潜在助産師が誕生することになる。助産師不足を考えるとき,このような施設内潜在助産師がどれくらい存在しているのか明らかにすることは,本来の助産師の充足状況の実態を示すうえで不可欠である。
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