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厚生労働省の調査によれば,2004年末のわが国の医師数は約27万人,10年前の1994年に比べると約4万人(年間約4,000人)増加している。その一方,産科,小児科,救命・外科系医師など勤務医を中心にその不足が報道されている。精神科病院においても勤務医不足は以前から現在まで変わることなく存在し,「医師の派遣をお願いできませんか。常勤医が望ましいのですが,非常勤(週1日)でも構いませんので」などと地域の医療施設から大学病院に依頼されることがしばしばある。大学は教育,研究,診療活動が本来の目的であり,医師派遣の任務はないが,臨床教育を目的に地域医療機関での診療活動も担ってきた。しかし大学病院からも医師は減り,医師の派遣は減少している。この現状には次のことが関係していると考える。
第一に,大学病院での若手医師(研修医,大学院生など)の減少である。大学病院には若手医師が大勢いるのが通念であった。しかし,昨今この状況が一部の大学病院を除き,変わりつつある。これまでは,6年間の医学部教育を終え,出身大学あるいは他大学の大学病院や一部の国公立病院で2年間研修する者が大多数を占めていた。しかし,2004年に義務づけられた新研修医制度がこの状態を大きく変えたようだ。2006年度の臨床研修医マッチング結果では大学病院で研修を受ける初期研修医は44%と5割を割り込む一方,市中病院では55%と増加した。特に地方の大学では激減したところが少なくない。研修医は,大学病院を離れ,都市部の大学病院以外の研修指定病院に集まった。大学病院での待遇問題(低給料・寄宿舎の不設置など),人間関係の煩雑さ,そして都会志向が大きく関与していると考える。そして,後期研修においては,大学院進学(学位取得)より,市中病院での臨床経験(専門医の早期取得)を希望する者が多い。
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