特集 急性期病院におけるせん妄ケアの改善とシステム化
せん妄ケアとこれからの病院経営―2006年度診療報酬改定をめぐって
吉田 千文
1
1千葉大学看護学部COEフェロー
pp.588-593
発行日 2007年7月10日
Published Date 2007/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100983
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はじめに
せん妄ケアに苦慮する師長とスタッフ
看護管理者は自身の責任領域にある患者に対して,良質な看護ケアを提供する責任をもっている。医療の高度化や高齢化を背景として,急性期病院では日常的にせん妄を発症する患者が存在し,対応に苦慮しているが,これまでせん妄ケアについて,看護管理の視点から取り上げられ議論されることはほとんどなかった。
看護師長のせん妄ケアに対する認識と対応を調査した研究1)では,看護師長はせん妄の発症や重症化予防に関する十分な知識をもち,それをもとに看護ケアを組織化しているのではなく,発症後に苦慮しながら症状の鎮静化や患者の安全確保に奔走していることが示されている。
筆者らの調査2)では,せん妄ケアを支えるシステム――例えば,せん妄発症患者に対するケア方針の共有,センサーマットなどの看護物品の整備,見守り要員の配置体制,およびせん妄ケアに関する現任教育――がほとんどない状況で,看護スタッフが自分自身のもっている限られたせん妄ケアの知識と既存の看護技術を使って,患者へのケア責任を果たそうと苦慮していることが示された。また,いくつかのせん妄アセスメントツールが開発されているが,これらを用いて発症予測を行ない積極的にマネジメントしている現場は少ないことがわかった。
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