特集 横浜市立大学病院患者取り違え手術事件から何を学ぶか
本事件判決から看護管理者は何を学ぶべきか
井部 俊子
1,2
1聖路加看護大学看護管理学
2前聖路加国際病院
pp.690-692
発行日 2003年9月10日
Published Date 2003/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100894
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はじめに
人は人をどのように裁くのかを見なければならないと思い立ち,業務上過失傷害被告事件(患者取り違え手術事件)の二審公判を傍聴するため,霞ヶ関にある東京高等裁判所に数回通った。その日はたいてい激しい雨降りの日であった。今も裁判所の近くを通ると,道路にたたきつけるように降る雨音とまつわりつく雨の湿感が思い出される。
そこでは,医師や看護師であるわれわれの同僚たちが「被告人」と称される。この響きが衝撃的であった(本稿では被告人の実名を記号にしている)。
公判は,厳かに裁判官が現われると,検察官も弁護人も被告人も,そして傍聴人も起立し,礼をし,開廷される。
2003年3月25日,上記事件の二審判決が下された。安文夫裁判長は,「主文,原判決を破棄する」と述べたあと,引き続き「その理由」について陳述された。起訴状や原判決および証拠書類などの内容について省略された箇所もあったが,それでも優に2時間かかった。
この2時間に裁判長が発した内容は濃密であり,身じろぐことすら忘れていた。
本稿では,111頁に及ぶ判決文をもとに,司法が医療に対して下した判断内容を追認し,看護管理者が学ぶべきことを考察したい。
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