連載 彷徨い人の狂想曲・7
空蝉
辻内 優子
1
1心療内科・小児科・漢方医
pp.584-587
発行日 2003年7月10日
Published Date 2003/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100874
- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
安子は路地先で友達と別れて自分の家の前まで来ると,玄関の扉を見つめて一息ついた。ガラガラと大きな音をたてる引き戸をできるだけ静かに開けて,狭い土間を見た。いつもわが物顔に占領している男物の靴が今日はなかった。
「母ちゃん,ただいま」
母が一人だと分かると,自然に声も明るくなる。
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.