新連載 彷徨い人の狂想曲・1
風霜またひとつ
辻内 優子
pp.56-59
発行日 2003年1月10日
Published Date 2003/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100772
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大晦日の深夜勤。誰もが嫌がるものだが,さして一緒に過ごしたい人がいるわけでもない。法子は今年も仮眠室のテレビで紅白歌合戦を観ていた。大日というのは,思ったほど救急外来の受診者は多くない。どこも病院は休みになるからと年末にたくさん薬をもらっていく人が多いのか,誰しも気忙しく病気にならないのか。それとも,年末年始の当直は大抵研修医が担当していることを知ってのことか。紅組が勝とうが白組が勝とうがどうでもいいし,流行りの歌にもさほど興味はない。ただ,またあっという間に一年が終わってしまうという切なさが,この風物詩となった番組から伝わってくる。ぼんやりしている法子の耳に救急外来の電話がけたたましく鳴り響いた。
「はい,佐渡川病院救急外来です」
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