新連載 感染管理・業務改善 SUCCESS FILE・1
医師を巻き込んだ術前の剃毛廃止
藤田 烈
1
1国立名古屋病院感染対策室
pp.52-55
発行日 2003年1月10日
Published Date 2003/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100771
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何が問題だったか
術前日の剃毛処置と術創感染
私が当院で術前の剃毛廃止に取り組むことになった最初のきっかけは,心臓血管外科医師からの「最近,MRSA感染が増えている気がするから調査してほしい」という依頼でした。この依頼を受け,ICN(Infection Control Nurse)である私を含むICT(Infection Control Team)が,術感染に関する調査をすることとなりました。
まず現状把握のため,過去1年にさかのぼり,感染患者の感染状況の調査を行ないました。調査の中で,無菌領域での手術患者(心臓血管・整形外科領域など)に重篤な深部感染を起こすケースがほぼ毎月発生していること,そこには,皮膚常在菌以外の同一菌属(Pseudomonas属)による感染例が多く含まれていることがわかりました。これらの情報から,感染患者が術前・術中のいずれかに術野への外部からの細菌汚染を受けている可能性が高いと考えられました。Pseudomonas属は,緑膿菌に代表されるグラム陰性桿菌の1種で,水のある環境を好むと言われており,院内感染対策上最も重要な菌の1つです。この特徴から,剃毛時に使用する器具や石の使い回しが感染の原因として考えられました。具体的には,剃刀剃毛時に皮膚に付着した菌が,剃毛処置により傷害された皮膚の上で爆発的に増殖し,執刀時に行なわれる皮膚消毒を上回る感染力を発揮し,術感染を成立させたという推理です。
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