連載 イラン・イスラーム共和国 異文化を通して見る看護[5]
家族による看護・介護をめぐる状況
細谷 幸子
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1東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程
pp.438-441
発行日 2004年5月10日
Published Date 2004/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100741
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増加する在宅療養者と家族の負担
前回述べたように,イランでは,1980年代後半から,保健・医療サービスのネットワーク化や医療保障制度の整備が進み,遠隔地の農村部居住者や貧困者であっても,容易に受療できる体制が整ってきた。これによって,国民の健康水準は確実に上昇したが,一方で,現代的な医療システムの普及は,救命医療技術の高度化に支えられる形で,慢性疾患や障害を抱えたまま日常生活を送らねばならない人々を増加させる結果を生んでいる。
近年,このように看護や介護を日常的に必要とする慢性疾患患者や障害者,高齢者が入所できる施設も増えてきている。しかし,イランでは,長引く入院や介護施設への入所を嫌う傾向が見られる。つまり,長期に及ぶ治療や看護,介護が必要になった場合,その人は病院や施設ではなく,自宅で家族に囲まれて療養するべきだという考えが,一般的に支持されているのだ。
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