連載 法と医療のはざまで[最終回]
インフォームド・コンセントと法的責任
飯田 英男
1
1関東学院大学法学部
pp.1034-1035
発行日 2004年12月10日
Published Date 2004/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100590
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医療行為におけるインフォームド・コンセントの意義とその必要性は,わが国でも理解されており,医療現場にも徐々に定着してきているように思われる。
アメリカでは,20世紀初頭に,患者の同意なく手術などの医的侵襲行為を行なった医師は,不法行為による損害賠償責任を負うという原則が確立したが,1957年に単に患者の同意を得るだけでなく,治療に伴う危険などについても説明を必要とする裁判例があらわれた。1950年代以降に積み重ねられたインフォームド・コンセントに関する裁判例は,医療における患者の主体性を尊重しようという「患者の自己決定権」の考え方がその中核にあり,1990年には「患者の自己決定法」が成立している。わが国では,1990(平成2)年1月に日本医師会生命倫理懇談会「説明と同意についての報告」,1995(平成7)年6月に厚生省(当時)「インフォームド・コンセントの在り方に関する検討会報告書」などが公表され,1997(平成9)年の医療法の一部改正で,「医療の担い手は,医療を提供するにあたり,適切な説明を行ない,医療を受ける者の理解を得るように努めなければならない」(1条の4II項)との規定が加えられたが,患者の自己決定権の考え方については,現在でもさまざまな意見がある。
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