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はじめに
昨年,看護基礎教育のカリキュラム改正をめざして立ち上げられた「看護基礎教育の充実に関する検討会」が9回の議論を経て,本年4月に検討会の報告書1)を公表しました。本報告書を受けて,新カリキュラムに向かって指定規則の改正の準備が整ったところです。
本報告書を概観すると,看護師教育における来たるべきカリキュラム改正のポイントの一つに,「統合分野」の創設があります。そのなかの「看護の統合と実践」にチーム医療や看護管理,災害看護とともに医療安全も明記され,講義4単位,実習2単位が配されています。「看護の統合と実践」という統合科目の創設は,現在臨床から厳しく指摘され,また,新人看護師の不適応の要因ともなっている教育と臨床の乖離を狭めることを意図したものであることは言うまでもありません。臨床準備教育を充実させて,学生が卒後,臨床に適応する力を高めるねらいがあります。新人看護師を迎える臨床側にとっても期待するカリキュラム改正となるでしょう。
しかし,“言うは易し,行うは難し”で,この創設の意図を実現するには,全教員の相当の努力と工夫,実習施設との綿密な連携が必要になります。特に,教員の少ない専門学校では,授業・実習の設計などの準備で,教員への負担は重いでしょう。一方,科目ごとの独立性が強い大学は,科目の枠を超えて取り組まなければならないため,教員間の連携が課題となります。連携のないところでは,講義はテーマ別の特別講義の連続に,実習はとりあえず複数患者を割り当てて,師長,副師長の職務,リーダーの役割を体験させるといった形式的教育になりかねません。そうならないために,一教育施設のみで努力するよりも,複数の施設で効果的な教育メソッドやツールを開発し,共有することも考えるべきではないかと思います。
いずれにしても,看護の医療安全教育の充実を強く望む立場としては,カリキュラム改正が重要な端緒となると期待しています。そこで,本稿ではカリキュラム改正をにらんで,改めて医療安全教育について整理と確認を行った上で,今後の医療安全教育のあり方について考えてみたいと思います。
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