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はじめに
筆者は,聖路加国際病院(以下,当院)で感染管理を担当する看護師として,厚生労働省の「院内感染対策有識者会議」の委員に選ばれた。現場で実際に感染管理を担当するのは,国内外を見渡しても看護師が多い。にもかかわらず,これまで開催されてきた感染管理に関する会議の主な委員は,感染症を専門とする医師や,微生物学を研究する医学部教授であり,現場レベルの発言は少なかったように思う。そこで,委員を引き受けるにあたり,現場の担当者が直面している悩みの1つである「専任で活動できない」状況を改善するために,少なくとも急性期の医療を提供する施設では,専任の感染管理担当者というポジションを確保したいと考えた。感染管理体制を促進するためには,まず担当者を専任として配置するための,何らかの法的・経済的なインセンティブが必要だと思っていたからだ。
会議に参加した他の委員や参考人の助けもあり,院内感染対策有識者会議報告書「今後の院内感染対策のあり方について」には,当面必要な取り組みとして,特定機能病院等への専任院内感染対策担当者の配置が盛り込まれた。これを受け,医療法の一部が改正され,2004年1月から特定機能病院等81施設に専任担当者が配置されることとなった。もちろん,すべての医療機関で感染管理の担当者を専任とすべきかという議論はあるにしても,まずは急性期医療を担う一部の医療施設が感染管理体制を構築することで,地域全体の底上げが期待できることは間違いない。
本稿では,感染管理の担当者はなぜ専任であるべきなのか,そして担当者として任命されるのは看護師が多いことから,組織横断的に活動するための看護管理者の支援の重要性について述べたい。
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