連載 医療安全とコミュニケーションを考える・4
コミュニケーションエラーの背景要因として「思い込み」に注目する
嶋森 好子
1
,
増子 ひさ江
2
,
外谷 憲子
3
,
村上 美好
4
,
竹谷 美穂
5
,
平田 京子
6
,
奥村 元子
7
,
杢代 馨香
8
1京都大学医学部附属病院
2日本赤十字社幹部看護研修センター
3埼玉社会保険病院
4前済生会横浜市南部病院
5厚生中央病院
6横浜南共済病院
7日本看護協会中央ナースセンター業務部
8武蔵野赤十字病院
pp.60-64
発行日 2004年1月10日
Published Date 2004/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100424
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
日々,医療現場でのコミュニケーションエラーによる事故の報道が続いている。コミュニケーションエラーがなぜ生じるかについて,これまで本連載で述べてきた。人間の認知の仕組みや特徴から,このようなエラーが生じることは当たり前だという認識が必要である。
医療現場は忙しく,数多くの仕事(多重課題)を決められた時間内(時間切迫)に終えなければならない。そのために,人間の認知の特徴を活かすよりも,省力化し,効率的に仕事を終えたいとする姿勢が前面に出てしまう。まさか自分が事故の当事者になるとは誰も考えてはいない。できるだけ早く仕事を終えて次の人に迷惑をかけないようにしたいと思うだけである。繰り返すが,人間の認知の特性から考えて,いかに危険な行動をとっているのかということに気づく必要がある。
大事なことは,早く仕事を終えるために,正確に仕事を行なうことを引き換えにしてはいけないということだ。正確に行なうことが最も重要であって,このためには,「気が利かない」「仕事が遅い」という評価を甘んじて受ける強い姿勢が必要だと考える。こうした視点で,コミュニケーションエラー発生の仕組みをさらに探ってみたいと思う。
本稿では,前回に引き続き,コミュニケーションエラーの背景要因とその関連,人間特性として防ぎにくい「思い込み」という現象の背景について検討し,この防止策を考えたい。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.