新連載 法と医療のはざまで[1]
医療は過去の事故事例に学んでいるか
飯田 英男
1
1関東学院大学法学部
pp.56-57
発行日 2004年1月10日
Published Date 2004/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100420
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刑事医療過誤の裁判例を見ていると,同じような事故が繰り返されていることがよく分かる。事故が起きれば,それを教訓にして,同様の事故を繰り返さないようにすべきである。しかし,医療の世界では,なぜ同種事故が繰り返されるのか。
例えば,昭和38年に動・静脈用尿路・血管等X線造影剤ウログラフィンと静脈用胆嚢・胆管X線造影剤ビリグラフィンを,いずれも脊髄造影用として患者6人の脊髄硬膜外腔に注入して,3名を死亡,3名に重傷を負わせたという重大事故があった(東京高判昭和40年6月3日下級刑集7巻6号1159頁)。これは,刑事医療過誤裁判例の中では,唯一の実刑判決(禁固1年10月)が確定している事例であり,事故の内容も前例を見ないほど大きなものであるが,このような重大事故があれば,これを教訓に二度と同様の事故を起こさないように,医療関係者の教育訓練をはじめ,あらゆる対策を講じるのは当然であろう。
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